ドメーヌ、フィリップ・ブルノ
Domaine Philippe Brenot


 ドメーヌの歴史

ドメーヌは今から130年前に、現当主フィリップ・ブルノの曽祖父母によって創設されました。それ以前からブルノ家は葡萄畑を所有していましたが、主にワイン商として生計を立てていました。曽祖父母は、小麦粉を作るための風車も所有していました。その後、葡萄畑を買い増した曽祖父は、ワインのネゴシアンを設立します。フィリップの父方の祖父が、サントネーの医者の娘と結婚したため、バタール・モンラッシェの区画の一部が持参財産として、ブルノ家の所有になります。同時に、祖父はバタール・モンラッシェのその他区画も購入。以来、ブルノ家はバタール・モンラッシェに0.37ヘクタールの葡萄畑を所有することになったのです。ピュリニー・モンラッシェ“レ・ザンセニエール”の畑はフィリップの両親が購入。サントネー1級“レ・パスタン”は、フィリップの母がブルノ家に嫁いだ際、持参財産として持ってきたもの。その後、現当主であるフィリップと妻クリスティーヌは、ブルゴーニュ赤・白、シャサーニュ・モンラッシェ“ロルモー”の畑を購入し、現在では4.12ヘクタールを所有するドメーヌとなりました。

1977年にドメーヌを引き継いだフィリップは現在53歳。当初は、大部分の葡萄をネゴシアンに売却していました。しかし、フィリップの造る葡萄のクオリティは極めて高く、著名ネゴシアンがこぞって彼の葡萄を買い求めるほどでした。とりわけ、90年代初頭にスーパー・ネゴシアンの先駆けとして一世を風靡したヴェルジェの名声確立の影には、フィリップ・ブルノが葡萄を提供していたことが非常に大きく寄与していたと言われています。事実、ジャン=マリー・ギュファンスがヴェルジェを創設するにあたり、最も重要な葡萄購入先としていたのがこのフィリップ・ブルノで、現在では生産中止になってしまったヴェルジェのバタール・モンラッシェやピュリニー・モンラッシェ “レ・ザンセニエ−ル”は、フィリップ・ブルノの葡萄から造られていたものでした。ブルノの葡萄から造られたヴェルジェのバタールは、ヴェルジェのワインとして初めてパーカー・ポイント100点満点(現在でもヴェルジェの全ワインの中でパーカー・ポイント最高得点)を獲得し、ヴェルジェのその後の名声に大きな影響を与えたのです。現在ヴェルジェとの取引契約は満了を迎え、ドメーヌは年々元詰めを増やしていますが、18ヶ月から2年にわたる長期熟成をするドメーヌ・ブルノのワイン造りには一定の資金が必要なため、エティエンヌ・ソゼ、ジャン・リケール(ヴェルジェの元醸造長が興したネゴシアン)、オリヴィエ・ルフレーヴといったネゴシアンとの取引は今も継続しています。しかし、その最も大きな理由は、これら超一流ネゴシアンがフィリップの造る葡萄をどうしても購入したいという実情があるからです。ドメーヌは栽培面積4ヘクタール弱のミクロ・ドメーヌであるため、収穫時などの繁忙期を除き、フィリップと妻クリスティーヌの2人ですべての作業を行なっています。このため、ドメーヌの元詰めワインは大きなマーケットには殆ど出回らず、限られた人たちのみに提供されている、正真正銘、幻のブルゴーニュ・ワインです。その葡萄栽培とワイン醸造の腕を見込まれたフィリップは、現在ワイン造りの傍ら、ボーヌ醸造学校の非常勤講師として教壇に立ち、明日のヴィニュロンを夢見る若者たちの指導もしています。

 

 栽培と醸造

ドメーヌは有機栽培の認定は受けていませんが、テロワールに秘められたポテンシャルの高さを頑なに信じ、そのテロワールの個性を忠実にワインに反映することを目指し、除草剤、人工酵母、フィルター等の使用は80年代に完全に止めています。自らをヴィニュロン(栽培家)と名乗るフィリップの畑仕事は、収穫が終り、葡萄の葉が全て落ちた晩秋から、翌年に向けての土起こしからスタートします。フィリップ曰く、「土起こしにはその土地に眠る良質な天然酵母を解放する重要な役割がある。」のです。このため、天然酵母を殺す除草剤はもちろん、肥料も一切撒きません。土深くに眠る豊富で複雑なミネラルを葡萄の根に搾り出して欲しいという配慮からです。葡萄の収穫は全て手摘みで、葡萄が仕込みの前に潰れてしまわないように、底の浅いケースで葡萄同士がなるべく重ならないように丁寧に収穫されます。「ケースの中で葡萄が潰れて果汁が溜まっている収穫なんて論外だ。痛みのない健全な葡萄で、100%葡萄が運んだ天然酵母と土壌のミネラルを凝縮させた果汁で発酵をスタートさせるのが私の使命。それが果たされてはじめて今年のヴィニュロンの役目が終わる。」こうフィリップは断言します。輸送が面倒で、人件費等のコストがかかり、近年とみに少なくなりつつあるケース収穫。効率の面を考え、品質に差ほど大差がないと敬遠されがちな方法をあえて実践し続ける姿勢に、ヴィニュロンとしてのフィリップのこだわりが感じられます。選果は、畑とセラーで2回にわたって行われ、最良の葡萄だけが使われます。

白ワインは収穫後、直接圧搾し、12時間の前清澄の後、培養酵母を一切使用せず、各テロワールに宿る自然酵母のみで発酵。ACブルゴーニュを除き、全て樽で発酵されます。樽は全てアリエ産のバリック(225リットルの小樽)で、ドミニク・ローランの樽を手掛けていることで有名なダミー/Damy社製のもの。焼きはミディアム。熟成期間は村名で15-18ヶ月。プルミエ・クリュとグラン・クリュは18-24ヶ月。無清澄、無濾過で瓶詰め。新樽の比率は高いが、発酵段階から樽を使用しているため、樽に由来するいわゆる樽香はそれほど強くないのが、ドメーヌの白ワインの特徴です。赤ワインは100%除梗し、低温マセレーションを行った後、ACブルゴーニュを除き、全てオープン・トップの木樽で発酵。培養酵母は使用せず、補糖も行わず、自然酵母のみで発酵。サントネーに典型的なタンニンの強い逞しいワインではなく、エレガントで果実味豊かなワインに仕立てるため、ピジャージュは行わず、ルモンタージュのみでタンニンの抽出を出来るだけ押さえ、キュヴェゾンの期間も短期間に留める。発酵後、ダミー社製のアリエ産のバリックに移し、マロラクティック発酵と熟成。熟成期間は村名、1級ともに15-18ヶ月。清澄のみ行い、無濾過で瓶詰め。


収穫した葡萄を確かめるフィリップ・ブルノ

 

TANAKA-YA扱いのDm.フィリップ・ブルノのワイン

F-7511 フィリップ・ブルノ、“ラボー” ブルゴーニュ・シャルドネ

F-7514 フィリップ・ブルノ、“ルミリー” シャサーニュ・モンラッシェ 1級

F-7515 フィリップ・ブルノ、 バタール・モンラッシェ 特級