今回のワイン名とエチケットの由来
ワインの世界に長くいると、信じられないような間違った情報や、意味のないインチキな話によく出会います。
しかも残念なことにそのほとんどが同業者から広められています。
熱心に働く事なく、失敗や不本意なことから目を逸らそうとしています。
私は今回、この5つの間違った売り文句を、撃ち抜き(Five
Shoot)たいと思います。
1.私たちはとても暑い地域で栽培しているが、気温に波があるので、平均すればバランスの取れた気温で、酸味が保護されています。
⇒ありえません。まるで牛肉の赤ワイン煮込みを、200℃でオーブンに入れる代わりに、300℃のオーブンに30分入れ、15分冷蔵庫で冷やして平均を保っていると言っているようなものです。摂氏40度を超えるような暑すぎる環境の中では、熟成は止まり、蒸発によって水分が無くなるだけです。両極端の条件の2つの物を、足して2で割ったものと、理想的な条件から生み出されたものは同じではありません。
2.古い葡萄の木からは、必ず若い葡萄の木よりも良いワインができます。
⇒これも馬鹿馬鹿しいです。樹齢30年以上の樹からはもちろんいい葡萄が生まれます。しかし若い樹でも栽培を上手くやればいい葡萄ができ、また古いからと言って必ずしもいい葡萄ができるとは限りません。
3.土壌は6億年前のものです。
⇒はて、これはなんでしょう。土壌が古いからといって、我々の仕事にどんな影響があるのでしょうか。畑から鯨の骨やティラノサウルスの化石が出てきてもワインには何の影響もありません。
4.私達の畑は、水はけの良い土壌でとても優れています。
⇒この記述は、ヨーロッパでは有効ですが、カリフォルニアでは何の意味もありません。ヨーロッパの生産者が水はけの良い土壌を好むのは、ヨーロッパでは葡萄の成長期に雨が降るからです。果実の希釈を避けるために、水はけの良い土壌を選ぶ。それは理にかなっています。しかしカリフォルニアでは、4月から9月の降水量はほぼゼロ、10,11月まで無いこともあります。むしろカリフォルニアでは葡萄の健康を保つのに灌漑設備が必要なほどです。
5.テロワール
⇒この言葉ほど、誤用され、乱用され、利用されてきた言葉はないでしょう。栽培や醸造でのミス、欠陥の言い訳として使われています。もちろん、"テロワール"が存在しないとか、土壌や天候などの環境が重要でないという意味ではありません。それは実際、極めて重大であるが、もう一つ、ワインの質を決める重要な事は、栽培、醸造に熱心な生産者であるということです。必要以上に生産者の個性を出すものではありませんが、生産者がいなければワインは決して出来ません。
親愛なるワインラバーの皆様、カリフォルニアは葡萄栽培にとても恵まれた土地です。
世界でも類を見ない恵まれた天候です。
その中に多くの細かい天候や特有のテロワールをもった土地が点在しています。我々はその中で既成概念を破壊し、クリエイティブに、知性を生かし、規制のない自由な"ワイン造り"という芸術を、素晴らしい喜びに感じています。
「FIVE
SHOOTER」と名付けられた2010年のシラーとグルナッシュは、エチケットで強烈な印象を与えるのを控えるために、美裸体で飾ろうと思いました。
また「FIVE
SHOOTER」には「5つの品種を使っている」という意味も込めました。