パソ・ロブレスは,カレラなどが本拠を置くモントレー地区と,オー・ボン・クリマやシン・クア・ノンが本拠を置くサンタ・バーバラ地区の間に位置する新興産地で,1980年代後半から注目を集め始めたエリアだ。この地を「ローヌ系品種の新天地」として早くから高く評価していたフランスのシャトーヌフ・デュ・パプの重鎮ドメーヌ・ベラン(シャトー・ド・ボーカステル)は,アメリカの輸入代理店ロバート・ハース(ヴィンヤード・ブランズ)とのジョイントベンチャーでTablas
Creekタブラス・クリークを設立し,1987年にワイン造りに進出している。また,ブライアント・ファミリーやパルメイヤーなどを手掛けたカリスマ・ワインメーカーHelen
Turleyヘレン・ターリーの弟で,フロッグス・リープの共同経営から離れたラリー・ターリーも1993年にパソ・ロブレスにワイナリーを設立している。近年ではマニア垂涎のシラーのカリスマ的造り手サクサムなどもこのパソ・ロブレス本拠を置いている。
ラヴァンチュール・ワイナリーのオーナー兼ワインメーカーのステファン・アセオは,ブルゴーニュのマコン醸造学校で学んだ後,1982年にボルドーでドメーヌ・クルテイヤックを設立してワイン造りを始めた。その後,家族と共にサンテミリオン・グラン・クリュのシャトー,フルール・カルディナールとコート・ド・カスティヨンのシャトー・ロバンを購入し,15年間,独立独歩のヴィニュロンとして,また,細部にまで拘る職人的ワインメーカーとして,所有シャトー以外にも10以上のシャトーの醸造コンサルティングとして活躍していた。
しかし,定められた葡萄品種や製法の要件を満たさなければ,そのアペラシオンを名乗ることができないAOCの規制にいつしか嫌気が差していった。アセオの真の望みはAOCが許可する以上に革新的になることだったのだ。
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