テヌータ・ディ・トリノーロ 社
Tenuta di Trinoro :

トスカーナ



 

この全文はインポーターのモトックスがテヌータ・トリノーロを訪問して、オーナー アンドレア・フランケッティ氏にインタビューした模様の転載です

フィレンツェからアウトストラーダ(高速道路)でローマ方向へ車を走らせ、キアンチアーノ出口で降りてサルテアーノ方面へ向かう。ちょっと町に入ったところで「Tenuta di Trinoro」の道案内を発見。山を登ったり、降りたり3Kmほど走っていると何もないところにぽつんとカンティーナの門を見つけた。
ここが今、人々の注目を集めているテヌータ・ディ・トリノーロ?
日本での華やかな人気とは対照的に壮大な自然と静けさがあたり一帯を支配している。人間が自然とともに暮らせる場所。ブドウの樹と共にここに根をおろし、アンドレア・フランケッティ氏は生活をしているのだ。

家はカンティーナから少し丘を上った所に位置し、見晴らしは最高。(中略)緑豊かなアミアータ山がくっきり。視界を遮るものはなにもないこの自然の中フランケッティ氏は、一体何を感じ、何を思って生活しているのだろう?そんな興味と共に今回の訪問は始まった。

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オーナー アンドレア・フランケッティ氏の稀少インタビュー
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M=モトックスF=アンドレア・フランケッティ氏
 
M‐ この仕事する前は何されてたのです?
F‐アメリカにワインの輸出業してたんだよ。
M‐ それじゃ、ワインをつくる前からワイン業界の人だったのですね。何処のワインを扱っていたのですか?
F‐ ロベルト・ヴォエルッツィオやロンコ・デル・ニエミズ レントラッティ・・・とか
M‐ヴォエルツィオですか。あれは良いワインですね!
F‐僕もそう思うよ。あれは良いワインだ。
M‐日本のワイン専門誌のあなたの特集では“イタリアには学ぶものなどない”とか色々 非常にイタリアワインに対して否定的、挑戦的な事をおっしゃってましたが、ちょっと雰囲気がちがいますね。
F‐日本の雑誌の記事を訳してもらって読んだけどちょっとたいそうに書かれちゃったなぁ・・・
 

驚いたことに、ここでドイツの厚生大臣(Ministero)が尋ねてきた。その他フランケッティーの友人ととも8人で彼の家にて食事をすることに。自給自足、アンティパストはプロシュートチンタセネーゼ、カーボロネーロのブルスケッタ、トマトのパスタ、メインは鳥のグリルを出してくれた。シンプルだが本来の旨味を感じるものばかり。食事も終わりドイツ大臣、友達と別れの挨拶して、彼の居間にてまたワインについてのインタヴューを再開した。

居間のステレオの前には彼お気に入りのCDが ジャニス・ジョプリン、ボブ・ディラン。
「ボブディラン好きなんですか?」と聞くと無言でうなずいた。

今ではトスカーナでも見かけない古い作りの家だ、家具も悪く言えば朽ちたような古さ、でも味がある。この家は長い間誰も住まずほっておかれたものだったが、移り住んだ時、約3年じっくり時間をかけて、本来の姿を壊さず再現したと話す。さっきの食事、そしてこの家からも彼の生活への強いこだわりが感じられる。

M‐この土地はいつ購入したんですか?
F‐80年か81年に、上のほうだけ買ったんだ、そのころは仕事でアメリカにいたりと、殆どここへ来れなかったけど。
M‐どうしてここを買ったんですか?
F‐たまたま、ここを訪れた時30年前にタイムスリップしたような昔のイタリアの田舎を感じたんだ。
M‐いつからワインをつくりはじめたのですか?
F‐ 91年くらいから。
M‐‘97よりマーケットに出したと聞いていますが、それ以前のワインはどうしたのですか?
F‐‘95をティヌヴァン、シュバルブランにもっていったけど酸っぱいとか言われて返されたよ(笑!) ‘97を持ってったら“スブリーム!素晴らしい”といってくれてすぐ売ってくれた。
M‐ところでここは誰もコンサルタントやエノロゴいないんですか?醸造技術などはどのようにして学ばれたのですか? 例えば葡萄病の解決法なんかはエノロゴやアグロノモにも聞かず?
F‐いないよ。全部独学、葉の色みれば何が不足しているか、病気についても分かるし。
サンテミリオンへ行ったら、シュヴァル・ブラン、バランドロー、などの友人と朝は朝食から晩は寝る前まで醸造の事ワインに関する話ばかりしているよ!彼らから学んでる。持つべきは友人関係。
 
M‐始めはどのくらいの畑から始めたんです?
F‐2ha半、5ha,8haと一年ごとに増やして行ったんだ。
M‐でもいいですね。私も作りたい。でも経済的に… お金どうしたんです?
実際ワインはすぐにお金にならないでしょ?収穫までに3〜4年はかかるし、人手はかかるし。
F‐家売ったもん。その金で始めた。最初は二人の年金者と一緒に畑の石取り除きからは始めた。2000立方mの石出てきたよ。
M‐想像‐日本のダンプにして400台分ぐらいかな
 
M‐葡萄のクローンはどこから?やはりフランスから? イタリアにもRauscedo(苗屋クローン屋)はありますけど、フランスの苗屋の中にはイタリアから買って売ってると聞いてますが。
F‐僕はRenouレヌーから買ってる。やはり良いクローンを作るには長い月日がかかるからね、イタリア品種ならともかくやはりフランスに良いものがある。この業者は非常に優秀だよ。一番始めはグラーブのシャトーランディラス(ワイナリー)の古い畑から良い木、メルローの剪定した枝もらって増やして植えたよ。
 
M‐簡単にくれるんですか? それに植物検疫に引っかからないんですか?
F‐やはり持つべきものは友人だよ、好きなの持っていきな!だって。それにこのころは検疫に関しては問題なかったと思うよ。
M‐それを密度9,000前後で植えたのですか?
F‐そう。それに植える際はフランスの経験豊かな専門チームを呼び寄せて植えたよ。その後は自分たちでやった。彼らから習ったから。
 
M‐やはりこれだけ植密度を上げるのは出来るだけ小さい房、実をつけさせるためですか?
F‐その通り、ワインはその土地、テロワールの凝縮、表現。もちろん土地だけではなく微気候など色々な要素が関係してくるがそれを表現する為にはこの植密度が大事なんだ。植密度が低く収穫量を落としてもうまく表現できない。
 
 

醗酵について聞いて

M‐醗酵タンクたくさんありますが、(20台ぐらいの醗酵タンクが並んでいる。ふつうこれくらいの規模だと10台くらい)F‐毎年40に分けて醗酵を行っているよ、というのは各小区画ごとで葡萄の熟成度、質などが違うから分けないと行けない。
M‐するともちろん収穫も細かく小区画ごとで? それは誰が決めるの?
F‐そう今日はこの列からこの列までという風にね!もちろん僕が。 その葡萄に合った醗酵をしようとするとどうしても細かく分けないといけない。
M‐あと醗酵期間日数12〜16と聞いていますが短いですね。
F‐そう非常に熟しているからアントシアニン、その他エキスがすぐに引き出てくる。収穫した葡萄を潰すと指が真っ赤に染まるよ、醗酵後3日目には真っ赤だよ!

M‐一本の木からどのくらいの葡萄を取るのですか?
F‐約300グラム、5房。計算があわないと言われるがうちの葡萄は非常に小さく小粒なので。
M‐1Haあたりどのくらいのワイン収穫量です?
F‐ 15hl 、葡萄収穫量が25hl。
M‐バリックに関してですがフランスの何処から? フランスバリック業者はイタリアへは良い木のバリック出さないと聞きますが?乾燥期間の短い木のを出すとか…
F-うちは一つの業者にバリックに色々な種類の木を使って作らしている。良い樽を出す出さないはちょっとわからないな、バリックに大事なのは使う木を雨にさらす事だ。
M‐そう言えば、ガヤは木を自分の敷地で野ざらしにして作らせてたとは聞いてました。どのくらいの期間樽熟を?全て新樽ですか?
F‐2000年まではマロラクティック醗酵を樽内で終わらせた時点でまた新たに新樽へ移し変えていたよ。だから200%と言う事になるかな。2001年からは新樽100%期間は決まってない、木臭が少しでものさばった時点でコンクリート槽へ移してしまう。あと全ての樽からいつも試飲してるよ。個別差があるし、その状態によってミクロ・オシジェナツィオーネ(微酸化)などその他使い分けるからね。でも全ての樽から常時試飲している作り手は意外と少ないよ!
 
 

剪定、樹齢,畑について

M‐ここの木は低く仕立ててますが病気の心配はないのですか?もちろん幹から出切るだけ近い方が葡萄にはいいとはわかりますが
F‐病気はそんなに心配はしていない房が地面につく様ではいけないが
M‐グイョですがこれには訳が
F‐木の成長抑制にはグイョが適していると思うよ、フランスが木の仕立てをこれにしているのは単に地熱を生かす(イタリアに比べ寒い)だけじゃないんだよ。もちろん葡萄への距離の短縮もあるが木の寿命にも関係している。
M‐化学肥料は?オーガニック?それとも今ちょっと取り沙汰されているバイオダイナミック?
F‐いや化学肥料は土地のバランスが崩れるから使わない、堆肥はきつ過ぎる。ゆっくりとソフトでなければならない。後で見せてあげるが剪定伐採した蔓を野ざらし、と言っても特殊なバクテリアを撒いて早く風化させて必要な時使っている。これはアメリカのバイオダイナミック関係の薬品を扱っている業者から買っているよ。普通ならあまりにも長い間置いておかないといけないからね。

M‐バイオダイナミックについてはどう思われます ブルゴーニュのトップも使ったリしてますが。

F‐畑の持っている自然の力を引き出すという考え方には賛成だが、色々な星の位置どうのはちょっと美化、神秘化し過ぎがなくはないな。
 
M‐じゃ、ここでは月の満ち欠けも無視ですか?
F‐いや月に関してはいつも考慮に入れているよ。(月について延々と語るフランケッティ氏)それに樽移し変え、瓶詰めその他移動はワイン状態の良い時にしている。
 
M‐確かに、週単位で味変化しますし 天気、気圧によっても違いますからね
F‐その通り、良い状態の時に移し変え,瓶詰め他する事も重要なんだ
 
M‐畑はまだ若いですよね、8年前後と聞いています。フランスの一流シャトーでは20年以上もしくはそれ以上の樹齢からしかクリュは作らないんでしょう?、根の到達地点の深さなども関係するのですよね。
F‐もちろんそうだ。しかし凝縮(水分を取るという事でなく)によってテロワールを表す事は出来る、私のワインは年々同じ顔、よりそれ自身が持っている顔に近づいていく。
 
M‐(ワインはボルドー系だが考え方はブルゴーニュのよう)
 
今のイタリアワインについて
 
M‐最近のたくさんのイタリアワインが過熟気味に思うのですが甘過ぎる、葡萄種のみのキャラクターだけ、まだそれだけならいいがワイナリーによっては他の地方で葡萄を買って10度に保ってトラックで持ってきて平気でまぜて売ってる、もしくは香り剤を混ぜたりetc・・・
F‐たしかに、それが今流行りだからね、植密度が低く収穫を落とすと糖分が高くなりアルコール度数は上がるが中身がないワインになる。
 
M‐なるほど コンチェントラトーレ水分除去機を使ったら?ブルゴーニュなんかは使ってるところもあると聞きますが。
F‐水分は取れて凝縮されても結局中身がないワインにしかならないよ。やはり植密度を上げてストレス、競争意識、を持たせ生物学的に小さく良い実を残させる様にし、よりテロワールを表現するんだ。
 
M‐最近のイタリアワインはテロワールよりいかにワイン評価誌に点数をつけてもらうか、抜栓してすぐ過熟実,甘い2〜3時間後には終わるワインが雑誌では最高評価を受けたりするご時世、フィネスも上品さもないワインが良いワイン、売れるんですね。
F‐マーケットが要求してるんだと思うよ、全てではないが。私のワインを色々な人間に飲んでもらうが殆どの人が夢中になってくれる、良いワインは誰が飲んでもうまいと感じるよ。
 
M‐最後に今日が世界の最後ならどのワインを開けたいですか?
イタリア一本、フランス一本で選んでください。
F‐白赤どっち?
M‐赤です
F‐フランスなら80年前後のシュバルブラン、イタリア あるなら20年前のヴォエルッツィオ
 
M‐まだないですよ、10年前ならありますけど。
F‐サッシカイアの20年くらい前のやつがいいな、あそこのワインは年取るとすごくよくなる。
M‐ たしかに 納得!です。
 
後畑を通る時にグイョの剪定を色々なパターンに対応したやり方を実地で剪定バサミを使って熱心に教えてくれた。長い時間ずっとつきあってくれた。