天然の泡 日本のヌーボー
サン・スフル白(微発泡) 霞(かすみ)がかかったようにうっすら濁った外観にプチプチッとはじける泡! じゅわーっと感じるうま味! ゴクリと飲んだ後のそう快なキレ!
今回のワインはデラウエアで仕込んだこの微発泡性の新酒だ。以前本欄で紹介したタケダワイナリーの女性社長、岸平典子さんが、今年初めて挑戦したワイン。
タケダワイナリーは、日本のスパークリングワインのパイオニア的存在。多くの国産発泡性ワインが、炭酸ガスを充填(じゅうてん)して造られているなか、密閉した瓶の中で2回目の発酵を促し、その時生じる泡をそのまま封じ込める、フランスのシャンパーニュと同じ造りをもう18年間も続けている。
彼女がこのワインを造ろうと思い立ったのには、三つの理由がある。一つは、日本一の生産量を誇る山形県のデラウエアを大事にしたかったから。二つ目は、毎秋ワイナリーで行う収穫祭で振る舞われるデラウエアのもろみのおいしさを、もっと多くの飲み手に届けたかったから。そして三つ目は、果汁本来のうま味そのままの微発泡性ワインを造りたかったから。そんな思いが結実したワインは酸化防止用の亜硫酸を加えず、酵母も取り除かず、そのまま瓶詰めしている。果汁を飲んでいるようにフレッシュで、やや濁っているのはそのためだ。
新酒には、本来秋の実りを喜び祝う意味合いもあったはず。海外産のヌーボーもいいけれど、こんな日本のヌーボーで乾杯して、実りの秋に感謝する思いを造り手と共有するのもいいじゃないか。
鹿取みゆき(フード&ワインジャーナリスト) 2007年11月19日版より転載