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「甲州種は竜眼の実生ではない」


甲州種は中国の竜眼種からの実生(みしょう)だという学説が現在でも有力だが、「甲州種は竜眼の実生ではない」との研究結果が醸造研究所・酒類理科学研究室の後藤奈美主任研究員らのDNA解析で明らかになった。

 後藤主任研究員によれば、異なる手法で甲州種のDNA解析を行ったところ、「RAPD解析の結果では甲州は‘東洋系ヴィテス・ヴィニフェラ’のクラスター(集合体)に含まれたが、RFLP解析では'ヴィテス・ラブルスカ'に類似したバンドを持つ一方で、他の品種には認められない独自のバンドがある」ことがわかった。

 また、再現性が高いといわれるRFLP解析では「同じカスピカ亜系とされる甲州と甲州三尺、中国品種の白鶏心と和田紅と竜眼とが二つの別のクラスターをつくった」との結果が得られた。少なくとも、これら三種類のDNA解析の結果から「甲州種は竜眼の直接の実生ではない」(後藤主任研究員)との事実が明らかになった。ただ、現在のDNA解析法では途中で自然交配した場合、親の判別確率がかなり低いため先祖が何かは不明という。

「ピノ・ノワールの枝変わりせ生じた」とされているピノ・ブランをAFLP解析した結果では、「複数のバンドに違いがみられ、枝変わりではない」(同主任研究員)ことも判明。また、カリフォルニア大学のポワーズ氏らが行ったミクロサテライトDNA解析によると、「カベルネ・ソーヴィニヨォンはカベルネ・フランとソーヴィニヨォン・ブランの自然交雑の結果生じた可能性が高い」ことが明らかになっており、同様の解析法によるオーストリア研究班の報告では「ミュラー・トルゥガウはリースリングとジルヴァーナーの交配品種ではなく、リースリングとシャスラ・ド・クルティリエの交配品種と考えられる」という。

酒販ニュース98/11/01号


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