つれづれ


最初に感銘を受けたワイン

15年ほど前、当時は取り引き問屋から細々と甘口のドイツワインを数種類と国産大手メーカーの、何やらゴールドとかシルバーなどと名のつくものがほとんどで、それはそれなりにおいしく、ワインとはこういうものと思っていました。

そんな折り、数本づつ仕入れた何種類かのフランスワインの中に、プィーイ・フュメがありました(ジャン・ボーギャン社のワインで、\3,000.くらいで販売したように記憶してます)。非常に発音しにくく、変わった名前なので本を開いて調べてわかったのは、ロワール河上流のワインで、原料はソーヴィニォン・ブラン種、はっきりした辛口で煙に似た独特の味わい。その味わいからフュメと呼ばれるようになったということ。こんどは、辞書でfumeを引くと、煙、煙ったようなとあり、その”煙”の味とはどんなものか?これはもう飲んでみるしかありません。

ちなみにこの時、やはりフランスワインで、プィーイ・フュッセなるワインもあることを知りました。少しワインの知識がある方ならご存じでしょうが、こちらはブルゴーニュ地方の辛口白ワインで、葡萄品種はシャルドネを使っているんですね。

 ワイングラスに注いだワインは、梅雨の季節のせいもありますが、冷えすぎたったようで、グラスはすぐに大粒の汗をかき、最初香りはあまりありません。すこし時間をおき、再度鼻を近づけるとすごい。今ならなんとか表現のしようもあるのでしょうが、このときはせいぜいリースリングの香りが解る程度でした。
未体験の香り。
変な例えですが、詰まっていた鼻がいっぺんに通じたような開放感。色はよく見もせず、口に含むとじわっと広がるんです冷たさが。まだ、香りの興奮が勝っていて含んだ時点の印象はそれだけ、しかし咽を通り過ぎてからのパワーはすごく、華やかではないのですが、存在感のある、しかもイヤミではない。
古賀先生のドイツワインの講習をなんどか受けることがあり、よく先生が「七色の彩光を放つ」とおしゃっていましたが、このフュメは、わたしにとって鼻から口、そして咽へ「七色の彩光」が通りすぎたという印象でした。

 その後、数種類のフュメを試しました。ラドセット男爵のはもちろんですが、私の気に入りはシャトー・ド・トラシー。でも、私の店では現在おいてません。お薦めするには、少しお値段がよすぎます。少しイメージが違いますがカリフォルニアのR・モンダヴィのフュメ・ブランをすすめております。

プィーイ・フュメに関しては、もう一つの思い出として、旅先のこと。

家族で伊勢に旅行した10年ほど前の夏。2泊目のホテルでのいわゆるディナー。この旅のハイライトでもあり、感想からいいますと、アワビのステーキもイセエビのクリームスープも最高でした。
食事のテーブルでワインのオーダーを聞かれて、おもむろにだされたワインリストを眺めながら最初からアワビにフュメの1/2と決めていた私に、勧めるのがミュスカデでした。それでもフュメの気持ちはゆるがず、「フュメ」とオーダーして出てきたのがなんと、先ほど勧められたミュスカデ。
普段ならそれで受け入れてしまうにですが、この時は毅然とオーダーと違うと抗議。少し待たされ、やっとフュメがでてきました。これが素晴らしくおいしかった。でも、その後赤ワインなども飲んだせいもあり、銘柄はまるでおぼえていません。
ま、今のところ、フュメについては、いい思い出ばかりです。

たわいもないワイン好きのたわごとでした。


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