概況
スペインのブドウ栽培面積は140万ヘクタールで世界一ですが、生産量となると収穫量の多い年でも、3、600万ヘクトリットルで第3位です。気候が乾燥しているためブドウの樹は離して植えられるので、ヘクタール当たりの収量は他の国に比べて極めて少なくなっています。
原産地呼称をもつブドウ畑の面積は63万ヘクタールで、全体の33%にあたる1、200万ヘクトリットルのワインが生産されている。原産地呼称制度( DO: Denominacion de Origin )
1920年代。リオハを始めとし、ヘレス(シェリー)、マラガなどワイン特産地の認定制度がはじまり、1970年代に原産地呼称庁(INDO)が設立され、1994年全国に40の統制委員会が設置され、現在は53を数えます。
4つの分類
|
|
|
|
カタルーニア地方バルセロナ市の北に位置するアレリャ村とその周辺一帯を含む。原産地呼称に認定された地域は、バルセロナ市の郊外の発展で縮小されているが、1989年ジェニスなど高地(標高255m)の4地区が産地としてあらたに認可された。白の代表品種は、パンサ・ブランカ(チャレッロ)とガルナッチャ・ブランカ。赤はテンプラニーニョとガルナッチャ・ティンタ主体。赤とロゼはオーク樽で短期間熟成させたものもあるが、名産は軽くてフレッシュな白ワイン。
バレンシア州にある3つの原産地呼称のひとつ。ブドウ畑は海岸から内陸のメセタの支脈へと広がる。標高は海岸で0mに近く、内陸部で400mと差が大きく、このため気候も地中海制気候と大陸性気候とにわけられます。
かっては、甘いリキュールワインやダブルペーストワイン、軽い赤に特徴を見せた地域だが、近年、技術革新もおこなわれるようになり、熟成を積んだクリアンサ、リゼルバの生産が増え、変革をとげつつある注目の地域の一つです。
バルデオラスの西側の栽培地域。ブドウ畑は650mの高地にあり、カンタブリア山脈が風除けになり、温暖。主なブドウは、赤用にメンシア、ガルナッチャ・ティントレラ、白がゴデーリョ、ドーニャ・ブランカ、マルバジア、パロミノ。
エブロ川支流のハロン川流域がDO。東部はカリニエナのDOに続く。赤の中心品種ガルナチャが栽培面積の65%を占める。熟成タイプはまだテスト段階。赤も白もフレッシュなものが多い
エブエロ川流域、ナヴァラの南部に位置し、1980年DOがあたえられた。100%ビウラ種から造られる白と、100%ガリナチャ種のロゼが大半だが近年は熟成させた赤への移行がみられる。
エブロ川支流ウェルバ川に面し、サラゴサ市の南西にあたり、1960年にはDOが認められている。ランショ・ワインと呼ばれるアルコール度15度以上の赤ワインがある。品種はカリニャン(カリニェナ)種。
CAVAのDOは唯一例外的なもので、産地ではなく瓶内二次発酵によるスパークリングという製法に対するものです。しかし、実際のところ90%はカタルーニャ地方・バルセロナ県のサン・サドルニ・デ・ノヤで、残りはサラゴサ、ナヴァラ、リオハのエブロ川流域やドゥロ川、タホ川流域です。マカベオ、パレリャーダ種を使うが、味のスタイルは生産者により独自の個性をもっている。カヴァは樽で熟成させる期間が最低9ヶ月と定められているが、実際は市場に出るまで2〜3年寝かせたものが多い。
アンダルシア県の西端にあるウェルバ県にに位置し、東はポルトガルと国境を接する。また、渡り鳥のふるさとである大湿地帯の国立公園コト・ドニャナでも有名。かってはフォーティファイドワインが主流であったが、近年はサレマ種と呼ばれるブドウからフレッシュな辛口ワインが増えている。
エブロ川支流のセグレ川流域の地域、ピレネー山脈の麓にあたり、完全に大陸性の気候で夏は暑く冬は寒い。また、高地や海岸線にあるブドウ畑に比べ降水量が少ない。ブドウ栽培には最新のテクノロジーが導入され、日よけの管理から機械による剪定、摘み取りが行われ、醸造所にもブドウや果汁をポンプで圧搾しない、自重システムなど、最先端の機械設備が整っている。当地は最近30年間のスペインにおけるワインの技術革命の最前線となったところである。ワインは伝統的なタイプと、新しいタイプに分けられ、原産地呼称統制委員会はカタルーニャでみられる在来品種の全てと、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シャルドネを認可していて、近代技術の導入による新しいタイプのが高い評価を得ています。
正式な原産地呼称(DO)はヘレス/シェリー及びマンサーリャ/サンルカール・デ・バラメダで、カディス県の3市(ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サンタ・マリア、サンルカール・デ・バラメダ)周辺のブドウ栽培地域が含まれる。このゴールデン・トライアングルと呼ばれる三角地帯は海岸線も含みカディス県の西端に位置する。このブドウ産地に大きな影響を与えるグアダルキビール川はサンルカール・デ・バラメダの北で大西洋に注ぐ。また、ブドウ畑で覆われた白亜のなだらかに続く丘は、スペインでも印象的な景観である。ブドウは、パロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの3種類の白ブドウです。
シェリーは、ワインで嫌われる「酸化」を大きな特徴にしたフォーティファイドワインで、樽貯蔵中に生成されるフロールと呼ばれる酸膜酵母は、ソレラシステムと呼ばれるシェリー熟成システムにより様々なキャラクターをもたらします。
<フィノ>:軽く、色は薄い。すっきりときわめてドライ。生産地はヘレスとプエルト・デ・サンタ・マリア。
<マンサーリャ>:サンルカール・デ・バラメダで造られるフィノのことをこう呼びます。海に近いため口に含むとやや塩気を感じると言われます。
<アモンティリャード>:フィノが古くなってフロールが死んでしまうと酸化する。ソレラで活性化させると琥珀色になり、ナッツのような香りと味になります。
<オロロソ>:フロールが発達しなかったワインにアルコールを強化し、酸化させて強烈な香りとデリケートなコク、深みをもたせたもの。辛口。
アンダルシア地方のほぼ中央、コルドバ市の南の栽培地域。かって世界貿易の半分量がジブラルタル海峡を通過し地中海で行われていた時代、アンダルシアのワインは世界最高の販売量であった。
ワインのタイプは伝統的なフォーティファイドワインとモダンなフレッシュなタイプの2タイプ。
ナヴァラ州全域が生産地域で、リオハの北東部にあたり最南部はエブロ川に接し、北部はピレネー山脈。ガルナッチャ種から造られ世界でもトップクラスといわれるロゼが有名だが、改植が進みオーク樽で熟成させた赤がトラディショナルで、将来的に有望視されている。クリアンサは最低6ヶ月オーク樽で熟成、その後瓶熟を経た赤ワインで、発売は収穫年も含め4年目以降。テンプラニーニョ主体だが、カベルネやメルロなどの国際品種がふえている。
カタルーニャ地方最初のワイン生産地。本格的にワイン生産が盛んになったのは'60年代からであるが、国際港湾都市バルセロナの南に位置していることにより、新しいスタイルのワイン造りに挑戦することができた。これは、ちょうど国境を隔てた反対側のフランスのラングドック・ルーションと同時期である。
ペネデスの辛口でフルーティな白はマカベオ、パレリャーダ種から造られるが、シャルドネやソーヴィニヨンを加えることもある。熟成させず、若いうちに消費される。赤はテンプラニーニョ、ガルナチャ種の伝統的なものから外来品種を混ぜるものなどさまざまである。メディオ、アルト・ペネデスの飛び地でミクロ気候を利用して造られる小さな個人ブドウ園の特別なワインは、国際品種を使うものが多く、赤も白もオーク樽で発酵させたり熟成させるが、期間は醸造元により異なり、クリアンサやリゼルバなどの表示はあまり使用されない。価格も国際級で大変高価になっている。
1980年代からの生産者の組合化によるマーケティング高品質化が功を奏し、1988年DOに認定を受け、スペイン最高の白ワイン産地の評価を獲得した。ガリシア地方を代表する栽培地域でほとんど白ワインを産する。スペインの中で最も年間降雨量の多い地域だが、花崗岩岩盤のおかげで、水はけはよい。アルバリーニョ種のブドウはドイツのリースリングでは?と言われていましたが、現在は“別モノ”との結論に達している。いづれにせよリースリングに似た複雑さを備えながらも美味しくさっぱり感もあり、完熟するとほとんど桃に近い味がするといわれる。
カスティーリャ・イ・レオン州の真ん中に位置し、ドウロ河を挟む栽培地域で、メセタと呼ばれる台地の上にある。砂、粘土、石灰の混じる沖積土の土壌で、河の丘陵部の斜面上部と上流部は石灰質の割合が増える。
リベラ・デ・デュエロの名声はベガ・シシリアにより長らく独占されていたが、1970年代末、ペスケーラの登場でベガ・シシリアでなくても芳醇なワインが造れることは証明されたとして、ワイナリーの創設ラッシュが続き、愛好家をうならせるワインがあまた誕生している。主なブドウ品種は、ティント・デル・バイス(ティント・フィノ)、ガルナッャ、カベルネ・ソーヴィニォン、マルベック、メルロ。白ブドウはアルビーリョ。ロゼはホーベンとクロアンサ、赤はティント・デリ・バイスを最低75%使用し、ホーベンからグラン・リゼルバまで。
内陸部の栽培地で、100m前後の高度。花崗岩の岩盤の沖積土。赤用はカイニョ、白はトレイシャドゥラ主体。軽くフルーティな味わいが特徴。
涼しいスペインの北部、海抜500m〜700mに位置するリオハはスペイン最良の生産地域です。これは在来品種のテンプラニーニョ(リオハで栽培されるブドウ品種の59%を占める)と大西洋、ビスケー湾そしてエブロ河の影響による気候がもたらしてくれるといわれます。
リオハのワインの最大の特徴は、樽の使い方の巧みさにあります。50%以上のワインが熟成に高価な樽を使っているといわれます。そして、このワイン産地を支える17,000人以上のブドウ栽培農家と160のボデガが存在し、統制委員会の規定より長い熟成をさせるといわれます。リオハにおける熟成の表示は下記のように決められています。
- ワールドクラスの赤ワインという評価に対して優良な白ワインがなかったスペインで、白ワインの産地としてリアス・バイシャスとともに注目されてきたのがルエダです。ルエダは1980年に白ワインだけが原産地呼称に認定されるやスペインを代表する白ワインの産地となりました。海抜600〜780メートルにある中央台地(メセタ)のなだらかな土地に葡萄畑はあります。最も多く栽培されているのがベルデホで、そのほかビウラ、ソーヴィニォンブランがあります。最新機器の導入や、新しい醸造技術の導入など近代化が計られた結果、フレッシュで爽やかな白ワイン産地に生まれ変わったのです。
ソモンターノは「山麓」という意味があり、アラゴン州北部のピレネー山脈の麓にある。エブロ川最大の支流シンカ川が流れ、ブドウ畑の高度は650mで、主にバルバストロの町の付近に多い。土地は広いが、ブドウ畑の規模は小さくワインの生産量も限られていたが、原産地呼称が与えられてられてから、新しいワインの開発が盛んになった。テンプラニーニョ、ガルナチャ、アルカニョンの在来品種にくわえ、カベルネ、メルロ、シャルドネ、ゲベルツトラミネールなどの外来品種も栽培され、海外で称賛されている。
カタルーニャ州最大のDOで、海岸線からレイダ県までのタラゴナほぼ県全域で、タラゴナ・カンポとファルセットの2つの地区に分けられる。いずれもエブロ川の恩恵に属する栽培地だが、カンポは低地で、ファルセットは高地の丘陵地域で、標高は300mをこえる。
かってのワインは伝統的に重く、多くは酒精強化タイプで、ロンドンの飲み屋でタラゴナ・ルビーと呼ばれ、安物のポートワインの代用とされたそうです。しかし、近年の新しいタイプのワインはガルナチャ・ティンタ、カリニェナ、テンプラニーニョ、マカベオ、パレーリャなどの特徴を生かした洗練されたワインとして国際ワインマーケットに標準をあわせている。
- ルエダの北西、ドウロ河流域のなかでも最も西側に位置する栽培地域で、1987年に赤・白・ロゼが原産地呼称(DO)に認定されました。
河の周辺にある葡萄畑は肥沃な沖積土に覆われ、北部は石灰岩と砂質の多い土壌で、大陸性の気候をもちますが、リベラ・デル・デュエロに比べると海抜が下がるため、夏の気温はさらに高くなり、ブドウの成熟は早く進みます。栽培されているブドウはティンテ・トロで、これはテンプラニーニョと同じ品種ですが、長くトロで栽培されているうちに独自の個性を身につけたと言われています。濃厚な色、凝縮した果実味の赤ワインはこのティンテ・トロを75%以上使用することが義務づけられています。
1990年代後半より、リベラ・デル・デュエロやリオハの著名な生産者の投資が始るようになり、そのワインは凝縮さだけでなく洗練された品質の赤ワインが作られるようになり、注目を集めはじめ、有望視されるようになりました。
ウティエルレケーナは、バレンシアの北から南にかけての海抜700mの地帯に広がる約40,000haの栽培地域だが、長い間、南岸近くにあるもっと小さいけれどパワフルな隣人であるバレンシアの陰に隠れた存在に甘んじていた。
この地の特徴はブドウ畑の75%が、もともと教会で栽培されていたボバル種で占められていることである。このボバル種にガルナッチャ・ティンタを加えてつくられるロゼワインは一級品と評価は高い。
現在、ボバルに代わってテンプラニーニョが推奨され、良質の赤ワインへの取り組みが始まり、オーク樽で熟成された新世代のワインも増えている。ボバル100%のワインの登場は見逃せない潮流です。
土壌は沖積土。栽培地は300mの高さ。気候は割合乾燥している。赤用はメンシア、白はゴデーリョ種中心。地元消費用ワイン。
地名は「石の谷」という意味だそうで、首都マドリッドの南ラマンチャ平原の南に位置しますから、ま、西部劇の1シーンを思いうかべるような地域でしょう。ブドウは赤は、テンプタニーニョの変種といわれるセンシベル。白はアイレン種で、この地域は85%がこの白品種で占められている。しかし、有名なのは、残りの15%で造られる赤ワインです。オークの樽で熟成させたコクのあるフルーティでまろやかな味は、スペイン人の好きな味で、温かくソフトで繊細な果実味が魅力です。地元消費のみならず、世界中に輸出されています。