毎年春に行われ、明治時代から続く全国規模のお酒のコンテスト、全国新酒鑑評会。
今年も金賞受賞酒がお披露目されましたが、ところで今日「大吟醸」と呼ばれるお酒は、こうした蔵の技の粋を競うコンテストの中で、徐々に形づくられてきたものなのです。
「吟醸」という言葉は、明治の頃に誕生しましたが、「吟味して醸した酒」というほどの意味で、お酒の事象を指す言葉でした。
もともと定義が先にあったわけではありません。
やがて鑑評会・品評会が盛んになると、そこで造られるお酒のことを、「吟醸酒」と呼ぶようになります。技術の発達とともに、米を選び、よく磨き、酵母も選び、低温で発酵させ、小仕込みで造る……という造り方が、だいたい共通して行われるようになった頃から、吟醸・大吟醸という言葉が定着するようになりました。
蔵元は蔵の威信をかけて挑み、杜氏は自らの技の極限を競い、掌中の玉を磨くようにして作られる出品酒・大吟醸。
昭和50年代に入るまで、鑑評会出品酒、つまり大吟醸は、市場にほとんど出回らない蔵元秘蔵の酒に等しく、およそ一般の人が口にする機会はほとんどありませんでした。
今では気軽に飲めるようになりましたが、それでもチャンスがなければ滅多に口にできないのが、この金賞受賞酒。出会えたあなたはかなりの幸せ者。邂逅を喜びながら、最上級の味わいをお召しあがりください。