一躍フォントディの名を轟かせたのは、このフラッチャネッロに他なりません。それもそのはず、フォントディのジョヴァンニ・マネッティ氏が、「私の息子」と形容する、手塩にかけたワインだからです。完熟した健康なサンジョヴェーゼだけで造られ、濃いベリー系の果実、甘草、コーヒーの香り、高貴な酸とキリッとしたタンニンで精妙なる構造を持ちます。さらに、有機栽培に由来するナチュラルな飲み口。ピアノ線のような細長い繊細な余韻が飲む人を心酔させます。このワインが更なる真価を発揮するのは、10年以上の歳月が経った時でしょう。

ラベルの「ピエーヴ」は畑の一角にある1,200年前の教会をさし、その教会の祭壇の中にある十字架をラベルに選んでいます。その十字架には人間と土壌の関係が描かれていて、マネッティ氏は土壌と歴史を尊重する気持ちを込めて、このラベルにしたと説明します。彼の謙虚に自然を敬うエスプリが垣間見え、ワインは土壌の味わいがします。フォントディのすべてがここに集約された秀逸なる「スーパー・タスカン」です。

　◆2012Vnt評価

★ヴィナス97点 vinous.com 2015年7月
選りすぐりの果実から作られたフランチャネッロ・デ・ラ・ピエーヴェ2012年は、サンジョヴェーゼの暗く男性的な側面を見せてくれる。この上なくピュアな味わいが極めて印象的。シナモン、クローヴ、卸したての牛皮、甘草、プラムの香りがグラスから溢れる。2012年は、官能的なフルボディの味わいが特徴で、クラシックなフランチャネッロのスタイルでありながらも、フレンチオークの新樽の香りが、ここ数年間のヴィンテージで最もよくワインに溶け込んでおり、リリース後間もないにも関わらずトーストの香りが仄かに香るばかりである。酒齢の若いフランチャネッロの中で最も上質なワインと言えよう。2012年のフランチャネッロは、感嘆の声を漏らす程に素晴らしいワインである。飲み頃は、〜2032年。　

★パーカーポイント94点　eRobertParker.com #221　2015年10月
毎年のことではあるが、フラッチャネロの2012年も、最良の葡萄畑から選りすぐられた最良の果実を使って作られたワイン・セレクションの代表格だ。5つの小区画は、土壌の種類も日照量も実に様々で、最も若い樹でも、樹齢20年である。果実の選定は非常に緻密で、最も色が濃く、粒の小さい実だけが丹念に選定される。その結果、ポリフェノールが非常に豊富で濃度が高く、香りの強い果実だけが選ばれる。2012年のヴィンテージの収穫量は20％も減少しているが、これは果実の選定がより厳しく行われた事を意味している。濃い果実とスパイスの大胆な味わいの中に、引き締まったミネラルのニュアンスがふんだんに包み込まれている。非常に贅沢な味わいで、口当たりがビロードのように柔らかなワイン。

　◆2012Vnt評価

★ 2014ヴィンテージ★パーカーポイント95点 2019年8月1日 モニカ・ラーナー
　既によく知られているように2014年はあまり容易な年ではなかった。しかしフォントディは、特にこのような寒冷湿潤で雨の多いヴィンテージに最高のワインを生み出すことで強力な実績を持つ。2014年のフラッチャネッロは、より温暖な気候に恵まれて重厚な凝縮感を持つ近年のヴィンテージに比べると、間違いなくよりコンパクトでスリムなワインである。その代わり、このワインはより繊細で優美なアロマを持ち、森のベリー系果実や野生のチェリー、ローズヒップの香りへと徐々に発展してゆく。ジョヴァンニ・マネッティ曰く、困難な年は、フォントディにとって自らの気概を証明する絶好の機会であると言う。2014ヴィンテージは、熟成期間を通常よりもやや長くとることでワインに肉付きと重量感を増すための時間を与えている。また2014年は収穫量が大幅に減少した年で、フラッチャネッロに関しては例年の平均収量の30％減となった。この年の救いとなったのはフレッシュな酸で、ワインの持つ様々な要素をつなぎ合わせ、タイトに結びつける接着剤のような役割を果たしており、これによって完成度の高い魅惑的なワインに仕上がっている。

　

★ 2014ヴィンテージ★ワインスペクテーター94点 2017年10月31日
トーストやヴァニラを思わせるオークの風味がはっきりと感じられるこの赤ワインは、チェリーの種、フローラルな花の香り、煙草、黒鉛の風味が豊かに感じられる。心地よいハーモニーを湛えたピュアで濃厚な味わい。後味には、フルーティな果実味にスモーキーな風味とミネラルがこだまのように広がり、どこまでも続く長い余韻を生む。

　

★ 2014ヴィンテージ★ヴィノス96点 2018年1月　
2014年のフラッチャネッロは、恐らく同年のヴィーニャ・デル・ソルボよりもやや早く飲み頃を迎える。ミッドパレットがよりクリーミーで円やかな輪郭を持ち、ヴィーニャ・デル・ソルボよりも僅かに早熟な印象を受ける。しかしそれでも尚、ヴィンテージの特色である透明感のあるフィネスがはっきりと感じられる。ブラックチェリー、プラム、煙草、リコリス、チョコレート、スパイスの香りがほとばしるように溢れ、甘くクリーミーな後味が広がる。新樽率80％で18か月熟成、例年よりも樽熟成の期間をやや短くとっている

　◆フィントディとキャンティ

イタリアの二大ワイン産地、ピエモンテとトスカーナ。前者の代表的なワインをバローロ、バルバレスコとすれば、後者はブルネッロ・ディ・モンタルチーノとキアンティ。
キアンティはつい最近までほとんど輸出市場に出回らなかったイタリア・ワインの中で、唯一、世界中に知られているものでした。キアンティと聞くと、藁に包まれたフラスコ形の瓶を思い浮かべるでしょう。今から20年ぐらい前までは、日本やアメリカでもスパゲッティやピザを食べるとき、このキアンティがつきものでした。しかし、それは、雑多なブドウ品種をいくつもブレンドし、白ワインさえ加えてつくられた、非常に質の悪いワインでした。イタリアのワインの品質管理に関する法律ではキアンティは最高級のDOCGワインですが、かつてはその製法として、何種類ものブドウをブレンドすること、白ワインを一定量加えることが義務づけられていました。世界中に、大量に、安価に供給する必要があったからでしょう。また、トスカーナの主要品種であるサンジョヴェーゼだけでは、良いワインはつくれないとの固定観念もあったようです。
これに反旗をひるがえしたのが、1968年に設立されたフォントディです。ルネサンス期以来の瓦職人の家系に生まれ育ったマネッティ兄弟は、サンジョヴェーゼ100％でもおいしいキアンティがつくれるはずだと考え、実際、その通りのものを生み出しました。しかし、これを公表すれば法律違反となり、キアンティとして認められないため、しばらくは製法を内密にしていました。やがて、彼らに追随する者が現れ、サンジョヴェーゼ100％のワいンが公然と出回るようになりました。
そして1996年法律が改正され、サンジョヴェーゼ100％のワインもキアンティと認められるようになったのです。

　

ワイン・スペクテイター1999年11月号で、ジョヴァンニ・マネッティは「フォントディのつくるワインがイタリア最良のワインであることは明白だ。私はサンジョヴェーゼを信じている。カベルネやメルロは世界中どこでだってつくれる。でもサンジョヴェーゼは特別なんだ。それはトスカーナのためだけのものだから。」 と語っています。そのイタリア最良の生産者の、最高キュヴェがこのフラッチャネッロです。