アルベレッロ仕立の唯一のキャンティ
1716年にキャンティの地区の境界が設定されて以来、キャンティは8つのサブゾーンに分割された。モンテセコンドはフィレンツェから程近いキャンティ・クラシコ・ゾーンの最北端サン・カッシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペサに位置している。周囲を森に囲まれた自然に溢れる11ha
の畑では2001年から有機栽培を実践。2004年からはビオディナミを採用していて、土壌は石灰質が強く出ている。
炭酸カルシウムやマンガンが豊富でサンジョヴェーゼにとって理想的土壌。樹齢は平均30年で古い畑はヘクタールあたり3300本植樹。植替えた畑は6,000本/ha
の密植。針金に支えられている樹に“自然”を感じられず、徐々に支柱を必要としないアルベレッロ(株造り)に変更されている。これはトスカーナでは初めての試みかもしれない。
『哲学的なところが大きいけど…。自由な感じがするし、何より支柱がなければ生きていけないなんて自然とはいえないだろう?』
徐々にアルベレッロに仕立を変更していくという。基本的には下草は生やしっぱなし。豆類が植えられていて土壌に窒素を与えてくれる。これによって有機肥料さえも必要なくなったのだそう。
『畑は健康になり葡萄は力強くなってきた』
失敗続きのビオディナミ
『畑の真中に自宅があり、子供達と生活している。子供達の健康を考えていた時期にニコラ・ジョリーのセミナーに参加し、ビオディナミに自然と共感した』
しかし、ビオディナミへの転換は多くの困難を伴った。2008年はベト病にかかりほとんどの葡萄が焼け死んでしまった。自根の野生の葡萄を植樹し、サンジョヴェーゼを刺木した際は30%がフィロキセラにやられたそう。
しかし、確実に葡萄樹は耐性を強めていて葡萄自体も強くなってきているし、シルヴィオ本人も自然への対処の仕方が理解できるようになってきた。
醸造に関しても色々なことを試している。マセラシオンの期間も毎年変わっていく。
2005年頃からは“完熟と美しい酸の確保”の両立を強く意識し始める。それに伴って収穫時期が若干早くなってきた。更には果実だけでなく種子、茎も熟してくれるので15%程度は茎ごと発酵させるようになった。
『一時期は完熟を追い過ぎていたし、マセラシオンも長すぎたのかもしれない』
言葉通り、エレガントなワインに変化している。
還元的でないアンフォラ発酵
キャンティ以外で試しているのがアンフォラによる発酵・熟成。2010ヴィンテージのロッソ・デル・ロスポはアンフォラで発酵させたものとステンレスタンクで発酵させたものの2種類を造っている。
『カベルネでワインを造るならインターナショナルなものでなく、この土地のアイデンティティを表したものにしたかった。木との相性は悪くは無いが香を何も与えずに嫌気的な環境にないアンフォラを試してみたかった』
ワインは洗練されていてボトリング前であるのにも関らず、既に完成されたようなワインになっていた。
酸化防止剤に関しては
『畑での自然なアプローチという点ではもっと努力をしていきたいが、ワイン造りという点では“クリーンさ”は大切だと考えている。よって
SO2完全無添加よりも完璧な状態で消費者に届けられることの方が大切だと思う。勿論、添加する量は必要最低限であることは当然だけどね』
彼のアナライズを見ると亜硫酸の数値は恐ろしく少ない。来年からはトノーから大樽での発酵に変わる予定。毎年劇的に進化していくシルヴィオのワイン。よりエレガントで透明感のあるワインに向かっているようだ。