トスカーナ南部のモンテクッコで、たった一人でワイン造りに挑む女性がいます。ボルドーで最高峰の評価を受けるシャトー・ポンテ・カネで働き、ビオディナミを習得したシルヴィア・スピネッリ女史です。
シルヴィアは、生物学者として活躍していましたが、ワイン造りへの夢と情熱が抑えきれず、フィレンツェ大学で農学博士号を取得。シャトー・ポンテ・カネやラングドックのドメーヌ・ド・ラ・プローズで研鑽した後、自身のワイナリーを興しました。シルヴィアのワインは、サンジョヴェーゼ100%のワインと、近年発見されたプニテッロと呼ばれるトスカーナの古代品種を使ったワインの2種類のみ。女性の造り手や醸造家が増えたとはいえ、ピノ・ノワール同様、造り手の実力が試されるサンジョヴェーゼとプニテッロという単一品種ワインで激戦地区トスカーナに挑んだシルヴィアの心意気は敬服に値します。
彼女のワインは、過度の介入を避け、ブドウ品種本来の姿を表現することを貫くスタイルと、シャトー・ポンテ・カネなどの21世紀の現代的ワインに共通するモダンなニュアンスを兼ね備えた素晴らしいワインです。すでに現地ではルカ・マローニが、自身で主催する試飲会にシルヴィアの“サッサルソーレ”を選ぶなど大きな注目を集めています。また、ワインの名称やプレゼンテーションも現代的で、新時代の若々しい感性が感じられます。
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